―――過去と現在と未来――― ―8月28日― 【ここからは菊池翔太視点で話が進みます】 俺は今日も遅刻ギリギリに登校した。 でもなんだかかんだで間に合うのが俺のすごいと所だ。 ある意味計算通り俺は教室に滑りこんだ。 …でも誰もいない? しばらく待ってみたが誰も来ない。 しかたがない…誰か探してくるか… いくつかき教室をウロウロしたが、誰もいる気配はない。 俺は職員室に来てみた。 でもここにも誰もいない…。 †翔太† 「あれ?やっぱ今日休みかな?」 でも谷崎と吉澤の鞄はあったはず。 …まあ考えてもしょうがない。 せっかくのチャンスだ。好き勝手使わせて頂こう。 俺は職員室にある職員の休憩室に堂々と入った。 †翔太† 「1回ここ使ってみたかったんだよな♪」 堂々と横になり雑誌をとり、置いてあったせんべいに手を出した。 †翔太† 「いただきま〜す」 バリボリバリボリバリボリ バリボリバリボリバリボリ …ザ…ザ… †歩† 「翔太!!せんべいなんか食ってねえで放送室来い!!」 †翔太† 「ぶはっ!!!!!」 せんべいを吹き出してしまった。 †翔太† 「…今の声歩か?なんであいつが放送なんかかけてんだ…」 とりあえず放送室に向かった。 放送室には歩と谷崎と吉澤がいた 谷崎と吉澤が泣きそうな顔をしていた。 …ついさっきまで、泣いていたのかもしれない。 歩だけは普通だったな。 †翔太† 「歩、一体どうしたんだ?お前二人になんかしたんじゃ…」 疑いの目を歩に向けたが歩はそんなのお構いなしといった感じだ。 ため息をつきながら外を指さした。 …俺の叫びが響き渡った。 その後4人で話合いがあったが、そんなのは形だけだ。 すぐに皆バラバラに行動し始めた。 俺はとりあえず食べる物を確保しようと、 さっきの食いかけのせんべいを取りに行った。 せんべいはちゃんと残っていた。 †翔太† 「1つ位いいかな?」 ホントは皆の所に持っていくつもりだが1つ位なら…。 ……いや1つだけだぞ? ちゃんと皆のもああるぞ!! 自分に言い聞かせながら、食べようとするとそれを止めるように歩が現れた。 †歩† 「よう、つまみ食いとは余裕だな」 †翔太† 「…歩か、腹が減っては戦は出来ないからな」 一瞬焦ったが歩ならまあ構わないだろう。 †歩† 「腹は減らないはずだけどな…。  まあいいや、ホレ、これを着けろ」 歩は何かを俺に手渡した。 金の腕輪だ…。 †翔太† 「なんだコレ?」 †歩† 「…値打ち物かもな」 †翔太† 「……まじで?」 †歩† 「まじで!!」 俺はあっさり腕輪を着けた。 時間は11:24分― ―8月28日 47回目―   菊池翔太 4回目 ここの生活にも慣れてきた。 歩だけは俺と同じように毎日を繰り返している。 理由はよくわからんがまあ、そういう事なんだろう。 俺は少しこの世界に愛着が湧いていた。 勉強もない。 テストもない。 煩い教師もいない。 そして何より― …親父がいない… ……… …… … 幼い頃― 俺の家は3人家族だった。 俺とお袋と親父。 3人は仲良く過ごしていた。 俺はお袋が大好きで親父もお袋が大好きだった。 俺の家はお袋を中心として回っていた。 そんな幸せは疑いもなくずっと続くと思っていた。 でも終わりは必ずやってくる。 …それが少し早かった。 俺がまだ小さい頃お袋は死んだ… 交通事故にあって病院に運ばれたがそのまま 逝ってしまった。 …俺は泣いた。 一生分と言っていい位俺は泣いた。 …俺はこの時まだ8歳だった。 ―8月28日 50回目―   菊池翔太 7回目 お袋が死んでから家は荒れた。 俺はろくに口を開かなくなったし、親父は酒びたりになった。 何かにつけて親父は俺に暴力をふるうようになった。 お袋が生きていた頃はもちろんそんな事はされてはいない。 …おやじは変わった。 まあ俺もだけど… …それは今でも変わっていない。 そんな環境で育ったガキが学校でどういう目で見られるか… いじめられるか、避けられるかだろう…。 俺は荒れた。 要するに不良になった。 中学も2年になる頃には誰も俺に近づかなくなった。 回りの奴は皆俺の敵になった。 俺と目をあわせようとしないし、 用事があって話しかけてきても、こっちの顔色ばかり伺う。 当然、教師も俺をけむたがる。 …俺は学校に興味がなくなった。 俺は高校に入った。 別に入りたくはなかったが、親父に強引に入れられた。 散々俺を厄介者扱いしていたくせに、何をいまさら父親顔して…。 …まあ別にどうでもいい。 高校でも中学と同じようになるだろう。 そしてその内俺は学校をやめる。 なんとなくそう思っていた。 歩…お前に会うまではな… ―8月28日 53回目―   菊池翔太 10回目 高校に入っても俺は相変わらずだった。 クラスのやつらも教師も変わらない。 入学して数週間でまた中学の時のように俺は回りのやつらに けむたがれるようになった。 ここも敵ばかりだ。 …ある日教師に呼び出された。 恐らくこの顔の怪我だろう。 つい先日俺は他校の奴らとかなり派手に喧嘩した。 顔は痣だらけだった。 教師の話はやっぱりその事だった。 口うるさい教師。 キレる寸前で話しを聞いていた。 …そこにクラスの男子が一人きた。 確か北川とかいうやつだ。 教師に怒られてる俺を見ている。 俺は睨みつけた。 †翔太† 「見てんじゃねぇよ!!!」 …これでびびってどっか行くだろう。 でもお前は… †歩† 「ぶはははは♪♪お前なんだその顔!!!  顔ぼこぼこじゃん♪♪」 お前は笑ったんだ。 クラス中に怖がられているはずの 俺の顔を見て何の遠慮もなく、お前は笑った。 …不思議だった。 皆ずっっと俺を避け続けてきたのに、お前は俺と対等な立場で俺と話してくれた。 それが俺には嬉しかった。 だから俺も笑った。 この日から…いや、この時からお前は俺にとって、特別な奴になった。 ……勿論ホモではない。 純粋にお前の事をすごいと思ったんだ。 お前のお陰で俺はまた笑えるようになった。 グチグチいじけるようにグレていた自分が阿保らしくなった。 ……… …… … ―8月28日 56回目―   菊池翔太 11回目 †翔太† 「…なあ、歩はここから帰りたいんだよな?」 帰ったら学校以外またいつもの日々。 †歩† 「当たり前だろ、皆で一緒に帰るんだよ」 でも…お前がいたら楽しくやれる。 †翔太† 「そっか…じゃ俺も帰りてぇな。  お前いなくなったら、つまんないしな」 お前が元に戻りたいなら、俺も戻りたい。 11:20分 †歩† 「…翔太、大丈夫だ、すぐ帰れるからよ」 だから… †翔太† 「…だな!早く帰ってまた遊びに行きてぇね〜♪」 一緒に帰ってまた… 11:24分 †歩† 「そうだな…きっと帰れるだろ♪  …今すぐにでもな」 …お前とバカやって。 †翔太† 「はっ??」 …一緒に…笑いてぇな。 …歩の顔は笑っていた。 ちょっとだけ辛そうに…。 ……… …… …